きものスタイリスト 大久保信子流 季節を彩る晴れ着スタイル 晴れ着の丸昌 横浜店

セレモニーに好適な、
風薫る五月。

五月晴れ。明るい日差しがすがすがしいこの時期には、さまざまなセレモニーの機会が多くなります。
「春の叙勲」もその一つ。国家や社会に対して功労があった人へ授与される栄典で、宮中にて行われます。
参内にはドレスコードがあり、和装の場合、女性は色留袖が一般的です。

礼装/準礼装と着用範囲の広い色留袖

色留袖は裾に絵羽模様が広がっている着物で、最近は未婚既婚問わず着られます。
五つ紋を入れ比翼仕立てにすれば、黒留袖と同格の礼装になります。
叙勲の場合、宮中は黒を忌むため黒留袖を避け、礼装としては五つ紋の色留袖が最上位となります。なお、色留袖は三つ紋や一つ紋にすることで準礼装となり、身内の結婚式など、より着用の範囲が広がります。

大久保信子流コーディネート

晴れの伝達式へと臨む色留袖

ご主人の叙勲に同伴する
奥様の着こなし

宮中参内に
ふさわしい品格を意識して

今回は、勲章伝達式に同伴者として出席する60代女性の色留袖をコーディネートしました。色柄の詳細な決まりごとはありませんが、慶事ですから鶴や七宝、花菱といった吉祥模様が好ましく、宮中に参内する装いということを踏まえて、強い色や個性的な柄は避けます。受章の喜びをあらわしつつ、品良く、周囲と調和することに重きをおいて選びました。

色留袖

女性の優しさを引き立てるやわらかい桑色(くわいろ)地に、松・桐・瑞鳥などで横菱がかたどられた総刺繍の色留袖。金糸が使われていて華やかな一方、白色が淑やかで、全体の色数も抑えられているため派手になり過ぎず、品良く着こなせる一枚。

帯は寺院や城の天井を文様化した「格天井(ごうてんじょう)」と呼ばれる文様。格子の中に精緻な花柄が織りだされた格式の高い錦織の袋帯です。

帯揚げ&帯締め

留袖の場合、帯揚げ、帯締めは白で統一します。帯揚げは白の綸子。帯締めは、白地に金の平組みです。

草履&バッグ

着物や帯とトーンを合わせた、ゴールドの草履&バッグ。光沢が控えめなので印象がやわらかく、バッグの側面や草履の緒に描かれた花模様が上品な華やぎをプラス。

温雅な桑色に、
重厚な総刺繍で品格を

勲章伝達式に同伴者として出席する場合、自分が主役ではありませんから、ソフトで控えめな色の方が周囲と調和しやすく、場にさりげなく華を添えることができます。

今回選んだ着物の色は、日本人の肌によくなじみ、顔うつりがとても良い色。おめでたい金色にも近く、暖色系なので春らしくもあり、五月の陽光にもよく映えることでしょう。色留袖は礼装なので、比翼衿、帯締め、帯揚げなどの小物を白で揃えます。

裾に広く入った横菱は総刺繍。重厚感があり品格も申し分ありません。横菱は平安時代に公家の装束にも使われている有職文様の一つ。格調高い伝統文様です。洗練された品性や知性を感じさせる一方、文様そのものは花鳥の刺しゅうなので、女性らしい優美さも持ち合わせています。柄の分量が多く華やかでありながらも、白を中心に色数を抑えているため、奥ゆかしく清楚な印象を与えるたたずまい。好感度が高い着物と言えるでしょう。

同系色でまとまりよく。
菱形にはすっきり見せ効果も

帯は着物と同系色にするとまとまりが良くなり、控えめでありながらも品の良さや優しさが引き立ちます。
同系色では全身がメリハリなく平坦に見えてしまうのではないか、と心配する方もいらっしゃるかも知れませんが、これだけ豪華な柄行で、織ならではの重厚さもありますから心配はいりません。

伝統柄である格天井をデザイン化した大き目の菱形も、着物の横菱と呼応しており統一感が出ます。格子一つひとつに、格調高い花文がたっぷりと織り出されており、柄の分量や重さも着物と釣り合いがとれています。斜めに入ったラインは、ふくよかな人でもすっきり見せてくれる効果があります。

着物に合う帯を合わせると、着物がぱっと輝いて見えます。同時に帯も、一層見栄えが増し、着物と帯が互いに引き立てあうコーディネートになります。

コーディネートした色留袖の
レンタルはこちらから

※帯や小物は、丸昌のコーディネーターによる
お見計らいとなります。

教えてください! 愛用の一着

ターコイズブルーに
白を効かせた色留袖

洋風のパーティにも重宝する
爽やかな一着

鮮やかなターコイズブルーは遠くからでもぱっと目に入り実に華やか。
大久保先生「黒留袖は伝統柄で誂えたので、色留袖は少し遊びがあるものをと、この色を選びました。洋風のパーティにもなじみ、場が華やぐと好評です。着こなせるかな、と思うような強めの色でも、着てみると意外としっくりきます」

伸びやかな草花柄も白が基調で派手になり過ぎず、季節の爽やかさが引き立ちます。帯は古くから工芸で栄えた加賀藩(現在の石川県内)の伝統文様である加賀蜀江。
大久保先生「着物にあるブルーと同じ色が入っているので統一感が出ます」

未婚、既婚問わず
便利な色留袖

色留袖はなかなか着る機会がなくて…という方もいらっしゃるかも知れませんが、実は未婚既婚問わず、身内の婚礼などの改まった席に着用できる着物です。昔は既婚女性でも結婚歴が浅ければ、身内の婚礼時に色留袖も良しとされていました。今はさらに、女性の見た目年齢は若くなっていますし、写真映りも考慮し、色留袖を選ぶ方が増えてきたように感じています。一方、未婚女性の第一礼装は振袖ですが、晩婚化が進んでいる昨今、年齢によっては振袖をためらわれる方もいらっしゃるでしょう。そのような時こそ色留袖をお勧めします。

大久保信子さんのご紹介

1976年に某着物雑誌の制作に関わり、日本で初めて「きものスタイリスト」として紹介される。それ以降、ハースト婦人画報社、世界文化社、プレジデント社などの各雑誌、NHK、その他各種テレビ番組、着物取扱い業者のパンフレットなど、着物のスタイリングおよび着付けに幅広く携わる。十数年の日本舞踊の経験や、歌舞伎鑑賞を趣味としており、着物に関する奥行きの深い知識と美学を身につけている。常に、着る人の立場に立って、その人の持っている美しさを最大限に引き出すスタイリングと着付けには定評がある。