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高級振袖は何が違う?安価な振袖との違いや見分け方のポイント

高級振袖は何が違う?安価な振袖との違いや見分け方のポイント

成人式の晴れ着として、さらには結婚式や祝賀会などに出席する際の衣装として、品格と優雅さを併せ持つ振袖。特別な場面で着用する礼装の着物の中でも、最も格の高い正礼装にあたるため、その販売・レンタル価格は一般的に高めです。ですが、その中においても高低の幅があり、価格の妥当性をどう見極めればいいのか分からない、という声も聞かれます。そこでここでは、高級振袖と安価な振袖では何がどう違うのか、価格を左右する特徴や見分け方について解説します。

目次

高級振袖の特徴と、その見分け方

振袖の価格に関わるその他の要因

高級振袖の特徴と、その見分け方

振袖を着るシーンとしていちばん最初に思い浮かぶのが、成人式。一生に一度のイベントであり、自立した大人としての大事な門出でもあります。同級生との久しぶりの再会もあるので、安っぽく見えない、きちんとした振袖を選びたいと考えている方も多いと思います。そんな方のために、ここでは高級な振袖の特徴とその見分け方について、生地や染めなどの項目別に解説したいと思います。

生地の種類

着物は大きく分けると、冠婚葬祭のような正式な場面で装うフォーマルな着物と、日常の普段着として身につけるカジュアルな着物があります。もちろん、成人式などで着用される振袖もフォーマルな着物にあたります。こういったフォーマルな着物は、生糸と呼ばれる細くなめらかな絹糸から織り上げた生地から作られるのが一般的ですが、近年は技術の進歩にともない、化学繊維(ポリエステル)の生地で代用されるケースも見られます。

正絹生地

高級な振袖には絹100%の正絹素材が使用されます。絹は、蚕が作った繭から糸を引き出し、いくつもの工程を経てようやく生地になりますが、この繭は着物1枚につき約5kg必要で、蚕が食べる桑の葉は着物1枚につき約100kg必要なのだそうです。このように生産に多大な手間暇がかかるため、絹は希少な素材とされます。さらに、繊細で品のある光沢や色柄の鮮やかな発色、滑らかな感触、高い通気性など、正絹の生地は見た目の美しさだけでなく風合いの良さも兼ね備えています。そういった特徴が高く評価されることで、正絹の価格は高くなります。また正絹素材の中でも、絹の品質がより上級なものや、生地が高密度に織られたものはさらに高額になる傾向があります。

化繊(ポリエステル)生地

一方で、化学繊維のポリエステル生地が使用された振袖もあります。化学繊維は大量生産が可能なため、蚕の作った繭玉からいくつもの工程を経て完成する正絹よりも価格設定は低めです。ただし、繊維が丈夫で形崩れがほとんどなく、虫もつきにくいなど、お手入れの面では利点もあります。正絹に比べると、ポリエステルの生地は薄くペラペラした印象を受けるものもありますが、近年は加工技術の進展で生地の見た目も質感も改善されており、正絹との見分けが付きにくくなっています。そのため、振袖に限らず、その他の晴れ着の素材として使われるケースが多く見られます。

「正絹と化繊の見分けポイントはここ!」

上質な正絹素材は独特の光沢が特徴です。これは絹繊維に光が当たると、反射する光、透過する光、屈折する光などが生じるからだそうです。そのため、あからさまにキラキラした光沢ではなく、ごく自然で、繊細かつ深みのある光沢が見られます。ただ、一般人にはなかなか判断しづらいので、確認ができる場合は、販売店や専門家といったプロに見てもらうと良いでしょう。

色柄の染め方

振袖に用いられる生地は、もともとは何も色のついていない「白生地」と呼ばれる反物です。この白生地に色や柄の加工をしていくことで、華やかな振袖へと近づいていきます。加工方法は、大きく分けると2通り。職人が刷毛や筆、型紙などを用いて行う「手染め」と、印刷機械で行う「デジタルプリント」です。

振袖_色柄の染め方による違い

手染め

手染めには、手描き染め、絞り染め、型染めなど、さまざまな染色技法がありますが、どれも職人が一つひとつの工程を手作業で行うこと、そして、精度の高い表現をするには熟練の技が必要になることから、どうしても価格は高くなります。また手作業なので、同じ図案であっても全く同じに仕上がることはなく、一つひとつが唯一無二の魅力を持つ点は、手染めの振袖ならではの特徴と言えます。

手染めの例01)手描き染め

描きたい模様の輪郭を糊でなぞって防染し、隣り合う色が混ざらないように彩色していく「手描き友禅」の他、色の濃い部分から徐々に薄くぼかして染める「ぼかし染め」、溶かした蝋を筆や刷毛に含ませて模様を描き、その部分を防染してから染色する「ろうけつ染め」などがあります。

手染めの例02)絞り染め

「鹿の子絞り」「縫い締め絞り」「桶絞り」など、さまざまな技法があります。白生地に色をつけず、そのまま白く残すために、生地を糸で括ったり、縫って締めたり、板で挟むなどして防染してから染料に浸します。意図した通りの染め具合にするには熟練の技が必要です。

手染めの例03)型染め

模様を彫った型紙を白生地の上に置き、その上から防染糊や色糊を置いて色柄を染める方法です。「型友禅」「江戸小紋」「更紗」「紅型」などがこれにあたります。染めの技術もそうですが、この型紙の作成にも特殊な技術が必要とされます。型紙の素材が和紙のため経年劣化は避けられませんが、技術を持つ職人が限られるため作成数も減っており、より一層希少となっています。

デジタルプリント

一方で印刷機械を使ったデジタルプリントは、色柄の図案が1つできれば、あとは機械(テキスタイル用の大型インクジェットプリンター)が次々と印刷してくれます。言い換えるならば、自宅のインクジェットプリンターで年賀状を印刷するようなイメージです。素早く効率的に仕上がるため、手間のかかる手染めに比べれば価格を安く抑えられる利点があります。プログラムされた色柄どおりに機械で印刷するので製品ごとのムラがなく、どれも美しい仕上がりと言える反面、画一的すぎて味わい深さが少ないとも言えます。

「手染めとデジタルプリントの見分けポイントはここ!」

デジタルプリントには、大型のインクジェットプリンターが使用されます。近年は例外もあるようですが、インクジェットプリンターで印刷された生地の場合、インクが裏面まで浸透しないのが一般的です。一方、手染めの場合は染料がしっかり裏面まで浸透しているのが特徴です。なので、裏面を見た時に柄の部分の生地が白っぽい場合は、確実にデジタルプリントです。ですが、仕立て済み(既製品)の振袖の場合は裏地を付けて仕立ててあるため、生地の裏面を確認することが困難。この場合は、お店の方に確認してみましょう。

装飾加工

未婚女性が着用する着物で最も格式が高い振袖は、豪華絢爛なデザインが特徴ですが、そのグレードを左右するのが緻密に縫われた刺繍や、金や銀の箔を用いた金彩加工です。こういった加工は「お化粧を施す」と表現され、専門の職人が手作業で行うのが一般的でしたが、近年はミシンで縫い上げる刺繍やエアーブラシで吹き付ける金彩加工など、機器を用いて装飾が施されるケースもあります。

振袖_装飾加工による違い

職人による装飾

金糸や銀糸を使ってひと針ひと針、繊細な模様を描く「金駒刺繍」や「銀駒刺繍」、手描き友禅の染め上がった模様の輪郭に、樹脂と混ぜてペースト状にした金を絞り出して線を描く「金線描き」などは、振袖によく見られる装飾加工の一例です。柄付けすべてが刺繍でなされた総刺繍の振袖や、金線描き、押し箔、砂子など多様な金彩加工が施された振袖は、職人の熟練の技術だけでなく、大変な手間暇がかかるため、非常に高価になります。

機器による装飾

機器や加工材料のめざましい進展により、近年はデジタルデータを用いたミシン刺繍、スタンピングフィルムと圧着機で行う金彩加工なども見られます。専門技術を持つ職人の高齢化や継承者の減少も、手作業に代わる新たな技術を取り入れた装飾方法を後押ししている要因と言えるかも知れません。手作業に比べると、大幅に時間の短縮が見込めるため、効率がアップした分、価格を抑えることができます。

「手作業と機器による装飾の見分けポイントはここ!」

職人が手作業で施した装飾加工は、作業の丁寧さや色使いの繊細さなど、その表現の細やかさに違いが出ます。ミシンで縫われた刺繍などは、技術の進歩によって精度が上がり、近年は遜色のない見た目になりつつありますが、仕上がりがペタッと平面的で、味わいや温もりといった要素は手縫いの刺繍に及びません。そういった細かな部分がチェックポイントになりますが、気になる場合は販売店の方に確認してみましょう。

縫製方法

振袖の縫製は、主に「手縫い」または「ミシン縫い」で行われます。ミシンがなかった時代は手縫いが当たり前で、手間も時間もかかる作業でしたが、ミシンの登場により一変。スピードアップというメリットがある反面、仕立て直しがしづらいというデメリットもあり、手縫いとミシン縫いを使い分けて縫製されることもあります。

振袖_縫製方法による違い

手縫い

手縫いの特徴は、生地に負荷がかかりにくい方法で縫われている点があげられます。具体的には、部分ごとに1本の縫糸を使い、生地に対して斜めに針を入れていきます。こうすることで、生地に強い負荷がかかって破れたり裂けたりする前に、縫い糸が切れるようになっているのです。ただし、縫い上げるには手間も時間もかかり、和裁の専門的な知識と技術も必要となるため、当然価格は高くなります。

ミシン縫い

一方、ミシン縫いの場合は上糸と下糸2本の縫い糸を使い、生地に対して垂直に針を入れて縫い上げます。手縫いに比べると縫製スピードが圧倒的に早いため、作業工数の軽減分、価格は安く設定できます。上下2本の糸を絡ませるように縫うので、強度はとても高いのですが、手縫いのように縫い糸に適度な遊びを持たせることが難しいため、強いテンションがかかると生地を傷めてしまう可能性があります。また、針が生地を貫通するので針穴が残ってしまい、仕立て直して再利用するということは困難です。

「手縫いとミシン縫いの見分けポイントはここ!」

一着の振袖でも、目につきやすい部分は手縫い、それ以外はミシン縫いという具合に縫製方法を変えることがあるので、一見してどちらか分かるケースは少ないかもしれません。ただ、生地や染め、装飾にこだわりのある振袖は、母から娘へ、姉から妹へと受け継がれることを見越して、洗い張りや仕立て直しができるよう手縫いされていることが大多数です。

仕立て方

ドレスやスーツなどの仕立てと同じように、振袖にもオーダーメイドやレディメイド(=既製品)があります。オーダーの方がより自分にフィットする細かい注文ができますが、サイズが合い、仕立て下ろしであることにこだわりがなければ、既製品の方が価格の面ではお得と言えます。

振袖_仕立て方による違い

オーダーメイド(未仕立て振袖)

オーダーメイドの中でも、着る人の体格を細かく採寸した上で、どの位置にどんな模様を描くか図案を起こし、白生地の反物に色を染め、絵付けをし、刺繍などの装飾を施すフルオーダーの場合は「お誂え」と呼ばれ、世界にたったひとつだけのオリジナル振袖が完成します。ただし、その工程には数ヶ月単位の時間がかかり、価格も大変高価になります。また、フルオーダーほど細かい指定はできないものの、振袖の柄が分かるように仮縫いされた「仮絵羽」の状態から、着る人の体格に合わせてある程度の調整をして仕立てるセミオーダー的な方法もあります。この場合、振袖の代金にプラスして仕立て代がかかるケースもあります。

既製品(仕立て上がり振袖)

一方、はじめから振袖として仕立て済みになっている、いわゆる既製品の振袖は、オーダーメイドに比べるとかなりリーズナブルです。仕立ても済んでいるため、必要とあらばすぐにでも利用可能です。この場合、あらかじめ決められたサイズで仕立てられてはいるものの、多くの人に合うよう標準的なサイズが採用されているので、ほとんどの場合は着付け時の補正でカバーできる範囲です。

「オーダーメイドと既製品の見分けポイントはここ!」

オーダーメイドか既製品かは、形状が完全に異なるので、見誤ることはないでしょう。言わずもがなですが、振袖のかたちになっているものが既製品です。

振袖の価格に関わるその他の要因

振袖の価格を左右する基本的な項目はすでにご紹介した通りですが、実はそれ以外にも、価格に関わる要因がいくつかあります。これらは、振袖の品質、価値そのものと言うよりも、外的要因に近いものですが、知識として把握知しておくと、振袖を選ぶ際の判断基準や納得材料として使えるでしょう。

紙の有無

証紙とは、審査基準に合格した高品質の振袖だけが与えられる、言わば証明書です。有名な産地、伝統工芸品の組合などが発行しており、例えば京友禅には「京友禅証紙」、加賀友禅には「加賀友禅証紙」が貼られています。品質の保証、価値の高さの証明となるものなので、証紙がある振袖は高価な場合が多いと言えるものの、証紙がないと価格が低いかと言うとそうではなく、きものフェスタや審査会などで、何らかの賞を取った振袖などは高値になります。

有名メーカーやブランド

長い伝統や、高い技術力を持つ老舗の呉服メーカーやブランドの振袖は高価になりやすいと言えます。こういったメーカーやブランドは、独自の技法や特徴を持っており、市場での評価が高いため価格に反映されます。確かな品質、唯一無二のデザインに愛好者やファンも多く、そういった高い支持があるものは、より一層高値になるケースもあります。

有名人の関わり

その時々の人気や実績により変わることはありますが、有名な作家やデザイナーなどが携わっている振袖も高価になる傾向があります。そういった振袖にはよく、◯◯◯プロデュースや、◇◇◇コレクションなどの個人名が謳われているので、すぐ気づくことができるでしょう。また、ターゲット世代に人気のある芸能人やモデルなどが大々的に広告に使用されている場合も高い価格がつくことがあります。これは、広告宣伝費などが価格にオンされていることが理由です。

最後に

高級な振袖には、そうなる理由、要因が複数あるということはお分かりいただけたかと思います。高級であるほど良いという訳では決してありませんが、実際に目で見て触れてみると、手間と技術を惜しまず丁寧に作られた振袖は重厚感や存在感が違います。それと比べると、安価な振袖は見た目も風合いも見劣りすることがあるでしょう。一生に一度の成人式には、自分なりに納得のいく振袖を選んで臨みたいと思う方は、パッと見の印象やデザインの好みだけでなく、生地の品質、染めや装飾の技術といった部分もチェックして選んでみてはいかがでしょうか。

晴れ着の丸昌 横浜店では、「吉澤織物」「関芳」「滝泰」「青柳」などといった、日本の伝統と職人の技を大切に受け継ぐ着物メーカーの振袖を取り揃えており、中には、今となっては入手困難な貴重な手仕事の振袖もございます。その他、人形浄瑠璃文楽や日本舞踊などの伝統文化において著名な「吉田簑助」「吾妻徳穂」といったブランドや、京友禅競技大会や十日町きものフェスタなど、着物の有名産地で行われたイベントで賞を受賞した柄の振袖もございます。振袖に関する疑問やお悩みなどは、スタッフにお気軽にご相談いただけますので、ぜひ店頭へ見学、試着にお越しください。

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