長襦袢は、着物を着付ける際に必ず必要になる小物のひとつ。ですが、小柄な方や高身長の方など、着る方の体型によっては着丈や袖丈などのサイズが合わない…という場合が出てくるかもしれません。そこでここでは、長襦袢のサイズが長いor短い場合の対応策についてご紹介いたします。
長襦袢とは。どんなもの?その役割は?
長襦袢は肌襦袢の上に重ねて着るもので、インナーに位置づけられるアイテムです。着物は、この長襦袢の上に重ねて着ます。なお、長襦袢はそのままの状態で着ることはできません。事前に衿の部分に半衿をつけ、そこに衿芯を入れておく必要があります。こうしておかないと衿の形状が整わず、着物をきれいに着付けることはできません。
このように、着付けにおいて長襦袢の重要性は非常に高く、他にも機能的な面では、汗や垢などの汚れが着物につくのを防ぐ、着物の足さばきをスムーズにする、寒い季節の保温性を高めるといった役割を果たします。また、インナーという位置づけにも関わらず、袖口や振りからわずかに覗く色や柄を、着物に合わせて楽しむというファッション的な役割も持っています。
なお長襦袢は、仕立てや生地によって着用の時期が変わります。これは季節に合わせて着分けを楽しむ着物と同じです。表地に裏地を縫い付けて生地を二重にした袷(あわせ)仕立ての長襦袢は保温性が高いため寒い時期に着用します。生地は主に綸子や縮緬、羽二重などの絹製が一般的ですが、自宅で洗える綿シルク製などもあります。なお、近年は空調設備が整った場所が多く、防寒の必要性が低いため、袖口と裾の部分だけ袷に見えるよう仕立てた袖無双(そでむそう)仕立てが主流になっています。この場合、胴の部分は生地が一枚なので暖房が効いた場所でも快適に過ごせます。一方、暑い時期は裏地のない単衣(ひとえ)仕立ての長襦袢を着用します。全体を一枚の生地で仕立てているため着心地が軽やかで、素材も絽や紗、麻などの通気性の良いものが使用されます。ただし生地が薄い分、強度が低めになってしまうため、傷みやすい腰から下の部分に居敷当てという補強布を当てることもあります。
長襦袢の身丈が合わない場合、どう対処する?
身丈とは、着物の身頃の長さのことです。長襦袢の場合、身丈は身長の約8割の長さが目安とされ、着た時に裾がくるぶしあたりになるよう仕立てた、対立(ついたて)仕立てのものが一般的です。とは言え、お誂えでなければ、なかなかジャストフィットという訳にはいきません。小柄な方や高身長の方の場合は、身丈が長かったり短かったり、サイズが合わないこともあるでしょう。
ですが、心配には及びません。長襦袢の身丈が長くても、着物と同じようにおはしょりをすれば問題なく着られます。長襦袢のおはしょり部分は、上から着物を着れば隠れてしまいますので、着姿には違いがありません。もし、事前に準備をする余裕がある場合は、ご自身の身長に身丈を合わせ、縫っておいても良いでしょう。着物を着れば見えないので、あまり神経質に細かく縫わなくても大丈夫です。縫う位置は、身八ツ口のすぐ下のあたり。ここは、身体の成長に合わせて身丈が変えられるよう、あらかじめ布を織り込んでおく内揚げと言われる処理がされる部分で、ちょうど帯を巻く位置にあたります。当然、見た目では全く分かりませんし、縫っておけば、おはしょりをするよりも紐の数が少なくて済むので、着付けはより簡単と言えるでしょう。
また、長襦袢の身丈が短い場合ですが、裾はよほど雑に動かない限り長襦袢が見えることはありませんので、あまり気にされなくても良いでしょう。ただし、絽や紗など夏用の着物の場合は長襦袢が透けて見え、着物の身丈とのアンバランスさが露呈されてしまうので気をつけましょう。
長襦袢の裄丈や袖丈が合わない場合、どう対処する?
裄丈とは、着物の背縫いから袖口までの長さ、肩幅と袖幅を足した長さのことを言います。また、袖丈とは袖山から袖下までの長さのことです。長襦袢の場合、裄丈も袖丈も着物よりもマイナス2分(2分=約0.75cm)が目安とされています。
裄丈は、腕の長さだけでなく、なで肩かいかり肩かといった体型にも関係するので、既製品の場合は、人によっては長かったり短かったりすることがあります。長襦袢は着物の内側なので、短い場合は目立ちませんが長い場合は調整した方が良いでしょう。隠れて見えないのできっちり縫う必要はありません。肩幅を少しつまんで縫い、裄丈を縮めればOKです。極端に長い場合は、袖幅も真ん中あたりをつまんで縫っておくと良いでしょう。
袖丈については、裄丈とは逆で、多少長くても着物の内側に収まるので、0.5~1cm長い程度であれば、さほど気にはなりません。あまりにも長く、着物の中でたるむようであれば中ほどを織り上げて縫っておきましょう。注意したいのは、長襦袢の袖丈が短い場合です。目安の2分(約0.75cm)よりも短いと、着物の振りから飛び出してしまうことがあり、美しい着こなしができません。このような場合は、長襦袢の袖が出てこない位置に合わせて、着物の振りの1cm内側を安全ピンで留めるか、仮縫いしてしまいしょう。ただし、着物がレンタルの場合は、お店のスタッフの方に事前に確認を取りましょう。
最後に
ジャストサイズでお誂えした長襦袢があれば、それに越したことはありませんが、なかなか着物を着る機会がない人にとっては、難しいことです。着物を着る時になって、長襦袢のサイズが合わないことに気付いたり、既製品の長襦袢がどうしても身体のサイズに合わない…ということは残念ながら起こり得ます。ですが、ここでご紹介した対処法を知っておけば、さほど慌てなくて済みますよね。もし回りに長襦袢のサイズが合わず困っている方がいらっしゃった場合は、アドバイスしてあげてくださいね。たくさんの人が、良い心持ちで着物を楽しまれることを願います。