見た目がよく似ている男性用の礼服と黒いビジネススーツですが、その着用シーンやマナーはまったく異なります。仕事や冠婚葬祭の場面で恥ずかしい思いをしないように、違いをしっかり押さえておきましょう。
礼服のブラックスーツとは
男性用の黒の礼服で一番使用頻度が高いのが「ブラックスーツ」といわれる黒い上下の組み合わせです。かつては略式という位置づけでしたが、現在は結婚式や祝賀行事、また葬儀や告別式まで冠婚葬祭のあらゆるシーンで着用されている大変便利な礼服です。
ところがこのブラックスーツ、男性の黒いビジネススーツと似ていて紛らわしいという問題があります。周囲に指摘されて恥ずかしい思いをしないよう、礼服のブラックスーツと黒いビジネススーツの違いをしっかり理解しておきましょう。
礼服のブラックスーツとビジネススーツとの違い「生地編」
礼服のブラックスーツと、黒のビジネススーツ。このふたつの生地の違いについてみてみましょう。
生地の「色」
礼服と普通の黒のビジネススーツは同じ黒に見えても黒色の濃さが違います。
室内では分かりにくいのですが、礼服は深さを感じる濃い黒、ビジネススーツは少しグレーがかった薄い黒色に見えるといった具合に、屋外でははっきり違いが分かります。
生地の「質」
礼服と普通の黒のビジネススーツは生地の質にも違いがあります。
礼服の生地には上質なウールが使われています。ビジネススーツには気軽に着られるよう、安価なポリエステルが含まれていることが多いのです。
生地の「光沢」
礼服と普通の黒のビジネススーツは生地の光沢も違います。
お悔やみの席で光沢のある服を着るのはマナー違反になるため、弔事にも着用できる礼服には光沢のある生地が使われることはまずありません。ビジネススーツは光沢のある生地のものが多く販売されています。
礼服のブラックスーツとビジネススーツとの違い「デザイン編」
礼服のブラックスーツと黒のビジネススーツのデザインの違いについても確認しましょう。デザイン的にはっきりとした境界はありませんが、フォーマル度の高いデザインを採用することでブラックスーツをより礼服らしく見せることができます。
ジャケットの「ラペル」
ラペルとはジャケットの襟の部分です。
襟のふちに添ってAMFステッチ(ハンドステッチ・ピックステッチ)という細かい縫い目があるかどうかをフォーマル度の目安にすることもできます。このステッチは略礼服であるブラックスーツには入っていることもありますが、礼装のタキシード・モーニングに入っていることはまずありません。ステッチがあればフォーマルさがやや低下し、カジュアル感が増すといわれています。
また衿の形もポイントです。下衿の先が鋭角で上を向いているピークドラペル(ピークは峰という意味)はフォーマルジャケットにみられる形で、ドレッシーさを演出します。
ジャケットの「ベント」
ジャケットの裾に入っているスリット(切れ込み)をベントといいます。もともとベントはポロなどのスポーツ競技から生まれたとされ、動きやすくするためのもの。
仕事着であるビジネススーツはベントが入っていますが、礼服などフォーマルウェアは切れ込みのないノーベントが原則です。
シルエット
一度購入するとあまり買い替えることはない礼服は、体型が変わっても着られるように、ゆったりとしたシルエットのものが多いのが特徴です。
ビジネススーツのシルエットは、最近の流行りもあり、細身でスタイルをよく見せてくれるようなデザインが一般的です。
最後に
よく似ていますが違いの多い礼服のブラックスーツと黒のビジネススーツ。きちんとしたブラックスーツは冠婚葬祭に着用できるため、一枚持っていると便利なものです。機会をみて一枚選んでみてはいかがでしょうか。