結婚式で、新郎新婦の母親や親族女性が着用する黒留袖。既婚女性の第一礼装であるがゆえ、その格にふさわしい着こなしが求められます。ですが、あまり着る機会のない着物であることから、ルールや決まりがよく分からないことも…。中でも、アクセサリーの着用については、どこまでが許される範囲なのか?どんなアクセサリーはダメなのか?また、立場によってルールが変わるのか?全然分からない!という声が聞かれます。そこでここでは、黒留袖を着た際のアクセサリー使いについて、詳しくご紹介します。
まずは、礼装時のアクセサリー使いの基本について。
着物には、黒留袖の他にも振袖、訪問着、小紋、紬などたくさんの種類がありますが、大きくは2つの種類に分けられます。ひとつが、結婚式や入学式をはじめ、パーティーや式典などのかしこまった場面で着るフォーマルな着物。そしてもうひとつが、観劇やコンサート、友人との食事会、ショッピングといったお出かけに普段着感覚で着るカジュアルな着物です。
なおフォーマルな着物の中には、正礼装、準礼装、略礼装という格の高さによる違いがありますが、これらはすべて「礼装」と呼ばれます。そして礼装の際は、帯、半衿、足袋や草履に至るまで合わせる和装小物にはルールや決まりがあり、もちろんアクセサリーの場合も同様です。
では、礼装時のアクセサリー使いのルールについてご紹介します。何だか難しそう…と思われるかも知れませんが、実は簡単で『できる限り、つけない』が基本のルールです。ですから、「つけようかな… つけないでおこうかな…」と迷うような場合は、つけないのが無難と言えるでしょう。
続いて、アクセサリーの種類別に詳しくみていきます。
礼装時の「指輪」について
結婚指輪や婚約指輪はつけてOKとされています。その他の、装飾的なファッションリングはNGです。これは、立派な宝石があしらわれた立て爪のリングなどは、着物に引っ掛かりやすく、生地を傷めてしまう可能性があるからです。なので、結婚指輪や婚約指輪であっても、あまり凹凸のない平たいリングにとどめます。
礼装時の「イヤリング/ピアス」について
NGというわけではないのですが、つける場合はゆらゆら揺れるタイプのものは避け、耳にピタッと留まる小ぶりのものにします。特に結婚式の場合は、和装に限らず洋装も同じルール。なぜなら、結婚式という場面で「揺れる=不安定」というのは縁起が悪いと考えられるためです。なお、礼装時のアクセサリーは、結婚・婚約指輪以外NGと思っている方が多いのも事実。そのため、周囲の反応が気になる場合は外す方が無難でしょう。
礼装時の「腕時計」について
腕時計の装着は、場面に応じて判断します。礼装であっても、あまり格式張らない席で着る略礼装であればつけてもOKですが、準礼装、正礼装といった格の高い装いの場合にはつけません。これには、着物の袖口が傷つきやすいという理由の他に、時間を気にしているように見えるためという理由もあります。また、つける腕時計はシンプルで華奢なデザインが良いでしょう。主張の強すぎる腕時計は、着物を着た手元には似合いません。どうしても必要な場合は、見るとき以外、帯にしまっておける懐中時計にすると、よりスマートでしょう。
礼装時の「ネックレス」について
ネックレスはつけません。着物の場合、衿元が大きく開くことはなく、ネックレスをつけても映えません。また礼装の場合は、清潔感のある白の半衿で衿元を品格高く装います。そのため、ネックレスをつけると違和感が出てしまいます。
礼装時の「ブレスレット」について
ネックレスと同様、ブレスレットもつけません。腕時計も同じですが、つけると着物の袖口を傷つけやすくなりますし、着物を着た手元に装飾を目的としたアクセサリーは似合いません。
礼装時の「帯留め」について
略礼装のやや気軽な場面、格式をあまり気にする必要のない場面なら、帯留めをつけてもOKです。ダイヤモンドやパールなどの宝石類、蒔絵や象牙の細工物など、高級感のあるものをつけると華やかさが演出でき素敵です。ですが、準礼装、正礼装で格式高く装う場合は、帯留めはつけないのがルールです。
アクセサリー装着の可否についてご紹介してきましたが、礼装で重視されるのは「格」に応じた着こなしです。そのため、つける場合は着物の格に合ったアクセサリーを選ぶ必要があります。上品さの感じられないもの、チープな見た目のものつけてしまうと、礼装としてのバランスを欠いてしまうので注意しましょう。
黒留袖の場合、アクセサリーは何をどうつける?
黒留袖は、既婚女性が着る着物の中で最も格の高い第一礼装ですので、つけられるアクセサリーは限られます。また、主に結婚式で着る着物ですので、結婚式のタブーに配慮する必要があることも心得ておきましょう。新郎新婦のお母様の他に、祖母、伯母・叔母、姉妹といった親族の方が着用される場合もあると思いますが、アクセサリーのルールはどの立場であっても基本的には同じです。
黒留袖を着た際の「指輪」について
結婚指輪、婚約指輪であればつけて構いません。両方を重ねづけしても大丈夫ですが、婚約指輪の場合は装飾が華やかなデザインも多いので注意が必要です。高い立て爪タイプは、着物に引っ掛かりやすいという点でも避けた方がよいでしょう。宝石のついていないシンプルでフラットなデザイン、宝石がついていてもリングに埋め込まれたデザインなどがベターです。
黒留袖を着た際の「イヤリング/ピアス」について
イヤリングもピアスも、つけない方が無難です。結婚式の場合、母親も親族もお客様をお迎えし、礼を尽くす立場にあるので、格式の高い装いである必要はありますが、目立つべきではありません。相手によっては「マナーが分かっていない」と受け取られる可能性もありますので、つけない方が良いでしょう。
黒留袖を着た際の「腕時計」について
これも、つけない方が良いでしょう。何より、時間を気にしているように見えるのは避けたいものです。
その他、ネックレスやブレスレットは礼装時のルールに従って、つけません。帯留めも、正礼装なのでつけません。また、アクセサリーという訳ではありませんが、香水のつけ方にも気をつけましょう。黒留袖に香水が付着すると、その香りが取れなくなってしまったり、生地に変色が生じる可能性があります。また、香りの好みは人によってそれぞれですので、ほのかに香る程度に控えめに。料理のにおいが分からなくなるほど強く香るつけ方はマナー違反です。
黒留袖は、アクセサリーなしでも華やかに着こなせる!
つけられるアクセサリーがごく一部に限られる黒留袖。せっかくの結婚式なのに、華やかさに欠けるのでは…?とお思いの方がいらっしゃるかも知れません。ですが心配は無用です。ここからは、黒留袖のコーディネートや着こなしのコツについてご紹介します。
帯のコーディネートについて
和装の場合、帯は着物と同格かそれ以上を合わせるのが基本。黒留袖は最も格高い着物なので、帯選びは大事です。礼装には袋帯を合わせるのが基本のルールですが、黒留袖の場合は金地、銀地、白地またはそれに多彩な色を加えて織られた錦織、唐織、綴織の帯を合わせます。これらは重厚感があり、その印象はまさに豪華絢爛。吉祥文様や有職文様など、格調の高い柄を選ぶと、黒留袖の着こなしがより華やかに演出できます。
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帯揚げ・帯締めのコーディネートについて
黒留袖に合わせる帯揚げ、帯締めはどちらも「白」が基本です。なお、白地に金銀色が入っているものでも良く、それらを使うと華やかな印象がプラスされるでしょう。
ヘアスタイルについて
黒留袖に限らず、和装の場合はアップスタイルですっきりと髪をまとめるのが美しいとされます。この時アクセントとして、べっ甲、蒔絵、漆塗り、真珠や珊瑚など高級感のある髪飾りをつけると、ワンランク上の装いに。
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最後に
よく分からないし、難しい…と思われがちな黒留袖のアクセサリー使い。基本は「結婚指輪のみOK」と覚えておけば大丈夫です。そして、迷った時はつけない。
そもそも黒留袖は最上格の着物ですから、描かれている柄、そこに施された刺繍や金彩・銀彩の加工などもとりわけ豪華。アクセサリーが少なくても、着物だけで十分華やかです。また、華やかさの演出はコーディネートでも可能です。ポイントは、何と言っても帯まわり。上品で格調の高い袋帯に、程よく金銀の入った帯揚げ、帯締めを合わせれば豪華な印象が加わり、一層素敵な着こなしになります。
晴れ着の丸昌 横浜店では、品質にこだわった正絹の黒留袖はもちろん、種類豊富な袋帯、帯揚げ、帯締めを取り揃えています。コーディネートにお困りの際は、ぜひお気軽にご相談ください。専門知識を備えたスタッフが、お客様の立場、年齢、お好みに合わせたご提案、アドバイスをさせていただきます。