黒留袖はもっとも格の高い着物のひとつで、結婚式などのひときわ特別な場面にしか着用しません。そのため、いざ着ることになった時にどう選べばよいか分からない…と困惑しがちな着物でもあります。そこでここでは、新郎新婦のお母様など、50代既婚女性にふさわしい黒留袖の選び方をご紹介します。それぞれのお立場や、柄の与える印象などを選ぶ際の参考にしてみてください。
「立場」に合わせて選ぶ
黒留袖を着用する主な機会は結婚式。その中でも、式の主催者側の立場である新郎新婦の母親、祖母や叔母などの既婚女性だけが着用します。
50代だと、新郎新婦のお母様や伯母・叔母様、または仲人夫人になるのではないでしょうか。しかし、同じ黒留袖を着る人物であっても、立場によってふさわしい黒留袖は違ってきます。
お母様の場合
式の主役である新郎新婦の母親ですから、お招きした方々に感謝や敬意といった礼儀を尽くす立場にあります。そのため、黒留袖はきちんと格調を意識して選び、失礼のない装いをする必要があります。
主役はあくまで新郎新婦で、母親は引き立て役ですから、やや落ち着いた雰囲気で上品に装うのがふさわしいと言えるでしょう。ですが引き立て役だからと言って、あまりにも地味な黒留袖や帯を選んでしまうと、寂しい感じになってしまいます。
大胆なモダン柄やビビッドな配色など、個性的でインパクトの強いデザインは派手に見えがちなので注意が必要ですが、やわらかい色合いで描かれた花々や縁起物のモチーフなど、高い品格は備えながらも、どこか明るい印象を与えてくれる黒留袖を選ぶと、晴れの場面に程よい華やぎを添える装いとなるでしょう。
伯母・叔母様の場合
親族にあたるとは言え、新郎新婦の母親よりは遠い立場ですから、目立ちすぎは禁物です。年齢にふさわしい落ち着きを備えた黒留袖を選び、やや控えめに装うようにしてください。
吉祥文様や有職文様など、品格のある古典柄なら間違いないでしょう。柄裄としては、ややすっきりめのものがおすすめです。柄の色数があまり多くないもの、金銀の箔や刺繍が控えめなものを選ぶと、目立ちすぎることなく上品に装えます。
なお、新郎新婦の母親や仲人夫人よりも格の高い黒留袖を着るのは、立場上NGになるため注意が必要です。できれば、どんな黒留袖を着るのか事前に確認しておくと安心です。
仲人夫人の場合
仲人夫人も新郎新婦の母親と同じように、お招きした方々への感謝や敬意を込めて、格調の高い黒留袖を着用します。50代という年齢に応じた、落ち着いた雰囲気のものがふさわしいでしょう。
また立場上、花嫁の横に居る場合が多いので、主役の花嫁を引き立てるという視点で選ぶと良いのではないでしょうか。
例えば、シックで落ち着いた柄裄に、品良く箔や刺繍などを施した黒留袖は、控えめながらも華があり、仲人という立場と晴れの場をわきまえた装いになるでしょう。
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「柄」の印象で選ぶ
黒留袖の場合、一般的に柄の描かれた面積が広く、高い位置にある程、若い方向けとされ、逆に面積が狭く、低い位置にある程、年配の方向けと言われています。ですが、柄のタイプは実にさまざまなバリエーションがあり、その印象や雰囲気もそれぞれです。
50代という年齢に見合った大人の品格や落ち着きは必要ですが、ご自身のキャラクターや好み、または結婚式や披露宴の会場の雰囲気に合わせて黒留袖を選んでみるのも良いのではないでしょうか。
重厚な印象
金彩や銀彩を贅沢に施した柄は、ゴージャスな雰囲気が漂います。挿し色だけを効果的に使い、全体の色数を少なめに抑えたものは、ひときわ重厚で高貴な印象を与えます。たくさんのお客様をお招きする大規模な会場でも美しく映えるでしょう。
トラディショナルな印象
鶴亀や松竹梅、熨斗など不老長寿を願う定番モチーフを描いた柄は、日本の伝統美を感じさせ、これぞ黒留袖といった雅やかな雰囲気が魅力です。格式のあるホテルや神社など、厳かな雰囲気の会場にお似合いの柄と言えるでしょう。
モダンな印象
エレガントな洋花が描かれた柄はモダンな印象を与えます。古典的な印象の強い梅や菊などに比べるとやわらかい雰囲気が漂い、チャペルやゲストハウスなど海外テイストの強い会場にもしっくりフィットするでしょう。
エキゾチックな印象
ローマやペルシャ、インドといった西方諸国の影響を受けている正倉院文様はエキゾチックな魅力を放ちます。華紋や唐草、唐花などがその代表的な柄です。まわりと似た雰囲気になるのを避けたい、少し個性的に見せたい、という方におすすめです。
シャープな印象
直線的なライン状の柄はすっきりとシャープな印象を与えてくれます。特に、スッと斜めに流れるような線の場合は、視覚的にもほっそり見える効果があります。キリリと凛々しく装いたい方、知的でクールなお顔立ちの方などにお似合いの柄と言えるでしょう。
フェミニンな印象
やわらかなカーブを描く曲線的な柄や、ふんわりとぼかしたグラデーションなどは、女性らしい優しげな雰囲気を醸します。体格が小柄な方や、かわいいお顔立ちの方などが着ると、その愛らしい魅力が一層引き立つでしょう。
最後に
生涯において、黒留袖を着る機会はそう多くはありません。特別な晴れの日だけに纏う着物ですから、後悔や心残りのないよう、ご自身のお立場や会場の雰囲気などをきちんと考慮してお選びください。晴れ着の丸昌 横浜店では、お客様のご希望やご条件に応じて、ふさわしい黒留袖のお見立てをサポートいたしますので、お気軽にお問合せください。
また、さまざまな事情により黒留袖の着用をためらわれる場合は、フォーマルな場面にふさわしい、黒留袖と同等の品格を備えたドレスのご提案も可能です。丸昌 横浜店では、黒留袖とドレスの両方の見学・試着ができますので、ぜひご利用ください。