着物
一つ紋入りの絽の色無地
日本の伝統文化「茶道」では、四季を通じて和の風情を愛でるのも楽しみの一つ。
夏のお茶会に招かれた際は、着物も季節を意識して着こなしたいものです。
今回は、盛夏のお茶会にふさわしい装いをご紹介します。
以下の着用シーンに合うアイテムを丸昌の
レンタル衣裳の中から選んでいただきました。
場面 | 盛夏のお茶会 |
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立場 | 茶道の先生主催のお茶会に客として出席 |
年代 | 30代 |
コーディネートのポイント
一つ紋入りの絽の色無地
清涼感のある絽綴の袋帯
お茶はわびさびを重んじ、華美なものは避ける慣例があります。そのためお茶会で着る着物は、そのことを意識して装う必要があります。一般的には、一つ紋の色無地に品の良い織り帯を合わせるのが良いと思います。季節感を取り入れたコーディネートになると、より良いでしょう。ただし、一口にお茶会と言っても、非常に改まったものから比較的カジュアルなものまで様々です。その会の趣旨や参加する立場、流派によって、着用できる着物の種類は一様ではありません。必ず事前に会主に尋ねておきましょう。
お茶会だけでなく、幅広い用途で着回せる着物
白生地を一色に染めた着物を色無地といいます。吉祥文様などの地紋が入っているものもありますが、柄はどこにも描かれておらず、控えめな装いになるため、華美を避けるお茶席で好まれる定番の着物です。ただ、格としては一つでも紋が入っていれば無紋の訪問着よりも上位。紫や鼠色といった地味な色味で、地紋が吉祥文様でなければ、合わせる帯や小物次第で慶弔両用となり重宝します。明るい色味であれば、格調の高い豪華な帯と金・銀を用いた礼装用の小物を合わせると華やかさが出るので、結婚式に招かれた際の装いとしてもふさわしく、反対に主張が控えめな色柄の帯と小物を合わせれば、すっきりと上品な印象になるので、お子様の七五三や入学式の装いに向いています。また、紋を入れない場合は、より気軽なお出かけ着としても着回せ、非常に用途の広い着物と言えます。
盛夏のお茶会に涼を呼ぶ、鮮やかな発色の青
明るくわずかに緑がかった青は「新橋色(しんばしいろ)」といって、明治から大正時代にかけて新橋芸者の間で流行ったことに由来する色です。欧米から輸入された化学染料によって染められた色で、それまでの天然染料にはなかった発色の鮮やかさは当時とても新鮮だったようです。それゆえにハイカラな色とされ、粋な芸者さんたちがこぞって着物に取り入れ、愛用したそうです。また、新橋色の青は、海や川といった水を想起させる色でもあり、盛夏のお茶会に涼感を呼ぶでしょう。一つ紋なので格もあり、会主に礼を尽くしたものになっています。
色数を抑え、お茶会に合うすっきりとした装いに
光悦垣に波文様と、鉄線や萩などの夏から秋にかけての草花柄が織りだされた絽の袋帯です。柄の青と着物の色が調和し、30代という年齢にふさわしい明るく洗練された印象を与えながらも、華美にはならず、着物も帯も映える一本です。
帯締めは女性らしいピンク色のレース組。帯揚げも絽のピンク色で、帯の柄の一色とも対応しており、色数を抑えることで全体としてもすっきりと見えます。重ね衿は使用しません。
※色無地は店頭のみの取扱い衣裳です。
※帯や小物は、丸昌のコーディネーターによる
お見計らいとなります。
夏の着物には絽や紗、絽綴、羅と呼ばれる帯を合わせます。軽やかで張りがあり、通気性が良いので見た目も着心地も涼やかです。帯揚げや帯締めなど、合わせる小物の色数は抑え目にして、すっきりしたコーディネートにするのも涼しく見せるポイントです。
6月1日から9月30日までは絽の帯揚げを使います。その中で、7月と8月は紗という素材も加わり、一層涼し気な装いになります。色合いは薄い無地やぼかし染めなどが涼感を呼びます。フォーマルな場面には白か、ごく薄い色の絽を合わせます。
代表的なモチーフには、朝顔や撫子、秋草、流水、花火、虫かごなどがあります。通常、季節を先取りしてまとうものですが、夏の文様には雪輪などの冬を感じさせるモチーフもあり、夏にあえて取り入れることで、涼しさを演出することもあります。
着物は夏着物の代表的な織りの一つ「紗」。細かいすき間が均一にあらわれ、通気性の良いさらりとした地風が特徴です。
大久保先生「この着物はオフホワイトの地に蚊絣(かがすり)という細かい絣が織りだされており、見た目に涼しく、帯合わせもしやすいのでお気に入りです。カジュアルな場ならどこにでも着て行ける、出番の多い着物です」
帯は墨色の絽に流水と青もみじがあしらわれた染め帯。絽は紗と並び夏の代表的な絹織物です。帯締め、帯揚げも薄い色で揃えた、夏らしいコーディネートです。
大久保先生「墨色(すみいろ)は黒と比べると、かすかに明るみがあり、より優しく見えます。色づく前の青もみじは涼やかで、今の時期に合っており、お気に入りです」
1976年に某着物雑誌の制作に関わり、日本で初めて「きものスタイリスト」として紹介される。それ以降、ハースト婦人画報社、世界文化社、プレジデント社などの各雑誌、NHK、その他各種テレビ番組、着物取扱い業者のパンフレットなど、着物のスタイリングおよび着付けに幅広く携わる。十数年の日本舞踊の経験や、歌舞伎鑑賞を趣味としており、着物に関する奥行きの深い知識と美学を身につけている。常に、着る人の立場に立って、その人の持っている美しさを最大限に引き出すスタイリングと着付けには定評がある。